この記事は以前noteに投稿した同様の内容の記事を修正し転載したものである。
ちなみに現在はwikipediaにポサディズムに言及した日本語の記事があるのでそちらを呼んだ方が早いかもしれない。
概要
このポサディズム(Posadism)は1960年代にアルゼンチンのトロツキストであり中南米、アルゼンチンの第4インターナショナルのトップだったフアン・ポサダスによって作り出された権威主義的かつ経済的に左翼的な思想(加速主義的な要素もある)。
主な組織は第4インターナショナルポサディスト。
ポサダス曰く
共産主義のみが惑星間旅行の発展が可能である。
他の惑星から来た宇宙人は皆高度な共産主義社会に住んでいる。
熱核戦争後に世界革命をもたらすため、地球単位で共産主義者に救いの手を差し伸べる。
人間はイルカや他の動物とコミュニケーションをとることができる。この分野におけるソ連の研究は「人間と自然の関係調和」につながる。
そして人類は水中出産に熱中するようになり、最終的に「アメーバのような」無性生殖に至り、「惨めで忌まわしい性的興奮」を治すという信念を持っている(後者については多くのポサディストが反論している)
要は「核兵器は放射能と同時に共産主義も撒き散らす」というもの。
ポサダス「熱核戦争こそが世界革命を達成できる方法だ」(要約)
これだけではなんのことやらわからないと思うのでさらに深堀する。
ポサダスは核戦争は避けられないと考え、核武装した社会主義国が資本主義国に対し核の先制攻撃を行うべきと主張した。つまりは核戦争後の世界が世界革命が達成できる世界であった。(同氏は1963年にアメリカ、ソ連、イギリスによって署名された部分的核実験条約に反対した)
彼はそれだけにとどまらず型破りな切り口の作品を数多く発表した。
「トロツキー主義とUFO研究の統合」
宇宙に知的生命体が存在する証拠はないが、当時の科学ではその存在の可能性が高い。さらに、空飛ぶ円盤(UFO)で地球を訪れる地球外生命体は、惑星間旅行を実現するために社会的・科学的に高度な文明から来たはずであり、そのような文明はポスト資本主義世界においてのみ実現され得た。
空飛ぶ円盤、物質とエネルギーのプロセス、科学と社会主義(1968年)
来訪した宇宙人は本来非暴力的で観察に来ただけだ。人類は宇宙人に地球の問題解決への介入を求めなければならない。すなわち「貧困、飢餓、失業、戦争を抑制し、すべての人に尊厳を持って生きる手段を与え、人類友愛の基盤を作る」ことだ。この目的を達成するための手段は、主流のトロツキストにとどまり、資本主義だけでなく労働者国家の官僚制を終わらせ、社会主義社会を確立する。
ポサダスが68年以降、このテーマで何かを発表することはなかった。しかしUFO研究はポサディズムの重要な部分となりポサダスの死去後も一部のポサディストたちは探求し続けた。
主にミナッツォーリ、シュルツ、グルントマンが研究し続けたが、その他の者は型破りの概念から距離を置き、地球外生命に対するポサダスの関心は誇張された限界点だったと主張した。
ポサディストによる社会
ポサディストは一般的なマルクス主義理論によって提案された社会と同様の社会を提唱している。プロレタリア革命によってブルジョア国家が破壊され、メディア、経済、貿易が統制された社会主義国家に取って代わられる。
科学の進歩
ポサダスは、科学の進歩が利益のためではなく、共通の利益のために使われたときに、人間の生活を向上させる方法に強い関心を抱いていた。
人類は、科学を拘束する拘束衣に圧迫され、抑圧されていると感じている。科学は抑圧されているのだ。資本家たちは、科学を使って人々を殺すことによって、科学を抑圧している。科学が解放されれば、-それは長くはない、ほんの数年のうちに-すべての問題、洪水、飢餓、不幸を一掃することができるだろう。このすべてはすでに実現可能であり、実現するのもそう遠くはないだろう。そして、そうなれば、誰もが建築家、エンジニア、医者などになることだろう。
ポサディズムに関する学術的な言説
アルゼンチンの過激派であるジョアン・ベネヴァンは、この組織をポサダスが「教皇」として活動する教会に例えた。
いくつかの加盟国が脱退し、その代表的なものはブラジルとアルゼンチンであった。ポサダスは、数名のメンバーを失い、学者からの支持も得られない中、それでも自分の主義、主張を実践し続けた。
テレサ・ヘイターの自伝『ヘイター・オブ・ザ・ブルジョワジー』で、ポサダスを「トロツキー主義からの逸脱者の中で最もクレイジー」と評しているように、当時の多くの学者は彼の活動を風刺的にとらえていた。
ポサディズムに関するごく最近の著作に、A・M・ギトリッツによる『信じたい』がある。「ポサディズム、UFO、黙示録的共産主義」と題するものである。著者は、ポサディズムの歴史とその最終的な崩壊を検証し、このテーマに対する現在の関心の高まりの意味を分析している。
ポサダスについて
幼少期
ポサダスの本名はHomero Rómulo Cristalli Frasnelli。1912年1月20日にアルゼンチン、マテーラ南部のイタリア移民の子として生を受けた。
ブエノスアイレスで少なくとも9人の兄弟姉妹とともに激しい貧困の中で育ったクリスタッリは母親の死後、兄弟姉妹と共に生きるため隣人から物乞いをしたり小銭のために雑用をしたりしなければならなくなった。栄養失調により永久的な健康障害が残ったが、この生活は資本主義に対する彼の見解に影響を与えた。
少年時代にはエストゥディアンテス・デ・ラ・プラタのサッカー選手として活躍。30年代には、靴職人として働き、アルゼンチンのコルドバで靴職人と皮革労働者の組合を組織した。
この時期、ブエノスアイレス州の選挙に社会党オブレロから立候補。その後、1941年に第4インターナショナルに加盟した社会主義革命党に参加したが、この党はすぐに衰退。
1947年、クリスタッリとダンテ・ミナゾーリがトロツキズムに傾倒する労働者階級の過激派の小さなサークル、Grupo Cuarta Internacional(GCI)を設立した。
トロツキストとしての運動
そして1950年代には第4インターナショナルのラテンアメリカ支局のリーダーとなり、彼の指導の下、この地域、特にキューバの鉄道労働者、ボリビアの錫鉱山労働者、ブラジルの農業労働者の間で運動は一定の影響力を持つようになった。
53年に第4インターナショナルが分裂すると、ポサダスと彼の信奉者たちは、ミシェル・パブロと第4インターナショナル国際事務局の側についた
しかし、59年になると、彼と信奉者は、ISFI指導部が革命の可能性に対する自信を欠いていると非難し、けん制し合うようになった。また、核戦争の問題でも対立し、ポサダスは「戦争革命」が「スターリン主義と資本主義の灰に決着をつける」「灰の中から社会主義社会が立ち上がるのだから核戦争は必然である」と考えていた。
そしてルイス・ナギルとともに、三大陸-農民工同盟の指示に従って設立された「破壊工作組織」を指揮した。
ISFIとの間の対立は悪化しポサダスはISFIに書かれた手紙のペンネームとして使われたため、その新しい名前を貰うこととなった。
その手紙の中で、ポサダスと支持者は、世界中のトロツキー主義運動は当時第4インターナショナルのラテンアメリカ局(BLA)に大きく影響されており、ヨーロッパ人は消極的になっているといった大胆な批判を行った。
BLAとISFIの双方が和解のために努力していると言われていたが、62年4月、ポサダスは大会を招集。BLAの指導者が率いるISFIの執行委員会を完全に再編成するという大胆な行動に出た。ポサダスとラテンアメリカに集中していた彼の国際的支持者たちは、1962年にISFIからの分離を決定(第4インターナショナル統一事務局{USFI/US:マンデル派}を形成する第4インターナショナル国際委員会{ICFI/IC:キャノン派}との再結成前)、新たな組織を立ち上げた。それがポサディストである。
核戦争について
62年に独自の第4インターナショナルを設立したが、第4インターナショナルポサディストという名称を使い始めたのは70年代初頭であった。
創立総会で、ポサダスは「原子戦争は不可避である」と宣言した。
人類の半分を破壊し、莫大な人類の富を破壊することになる。それは非常に可能性が高い。原爆戦争は、地球上に真の地獄を引き起こすだろう。しかし、それは共産主義を妨げるものではありません。
われわれは、原子戦争の前に権力闘争を行い、原子戦争の間に権力闘争を行い、そして権力を握るという段階のために自らを準備しているのである。原爆戦争は全世界同時革命だから、連鎖反応としてではなく、同時である。同時というのは、同じ日、同じ時間という意味ではない。歴史的な大事件は、時間や日数で計るのではなく、期間で計るべきである…労働者階級は、自らを維持し、そして、直ちにその凝集力と集中力を求めなければならない…。
破壊が始まった後、大衆は、すべての国で、短時間で、数時間で、出現することになる。資本主義は、洞窟の中に身を置き、破壊できるものは全て破壊しようとする以外に、原子戦争で自らを守ることはできない。それに対して、大衆は出てくる。出てこなければならない。なぜなら、敵を打ち負かすことが、生き残るための唯一の方法だからだ。資本主義の装置、警察、軍隊は抵抗できないだろう。
ポサダスは、「核戦争は革命的戦争に等しい」と書いた。
核戦争は人類にダメージを与えるが、人類が到達した意識レベルを破壊することはない。人類は核戦争を経て、新しい人類社会である社会主義に速やかに移行するだろう。
地球外生命体について
1968年以降、ポサダスはUFOと地球外生命体に関する理論でも知られるようになった。もしUFOのようなものが存在するならば、非常に高度な技術を習得したものが存在することを示すことができ、それはこの地球で社会主義が提唱しているものと適合するものであるだろう(つまり社会主義体制だからこそ成し遂げることができる)
もしUFOが存在するならば、地球上のいくつかの大きな問題に対処するために協力することができるだろう。
彼の最も有名な著作のひとつに、1968年に出版された『空飛ぶ円盤、物質とエネルギーのプロセス、科学と社会主義』というパンフレットがあり、ここで彼は、地球外生命体やUFOの存在を共産主義と結びつけている。
彼は、当時目撃されたUFOは他の惑星における生命の進歩を示しており、それは共産主義的なイデオロギーによってのみ可能であると主張した。
さらに、資本主義は人類の科学的・文明的進歩に取り組むのではなく、人々を自己中心的にし、利益を重視する傾向があると述べている。
地球外生命体が他の惑星を訪問できるほど高度な技術を開発したことは、彼らが資本主義社会の弊害を克服したことを意味する。それは、資本主義社会の弊害である殺戮や支配の衝動も克服しているということだ。他の惑星にいる者がここに来たとき、地球の住民に介入し、貧困を抑制するために協力するよう訴えなければならない。
と書き、地球外生命体との協力に熱意を示した。
つまりポサダスは共産主義を代替政治体制ではなく文明の進歩として定義しているのである。これは地球外生命体に関するポサダスの単著であるが、この思想は彼のフォロワーや後のトロツキストたちの間で多くの人気を博した。
「ポサダス万歳!」
イギリスの革命的労働者党(トロツキスト)が発行していた『赤旗』などのポサディスト新聞は、ソ連の宇宙飛行士や中国のロケット打ち上げを賞賛する見出しや、地方の労働争議に関する記事を掲載していた。
また、ポサダスは、最後に 「ポサダス万歳!」と叫ぶ習慣があることから、大きなエゴを持っていると考えられていた。
しかしこれはポサダスの文書の「書き方」に由来している。それは、親しい協力者たちとの小さな組織であれ、より大きな活動であれ、党の行事で行われたスピーチの記録であることがほとんどだった。初期の頃は、ポサダスが “Viva la Revolución Mundial!”と “Viva la Cuarta Internacional!”で演説を終えた後、誰かが “Viva el camarada Posadas!”と叫ぶのが恒例になっていたからだ。
第4インターナショナルポサディストについて
ポサダスが創設した第4インターナショナルポサディストは62年に設立されたがこの組織について語るにはもう少し歴史をさかのぼる必要がある。
1953年、第4インターナショナルが分裂(パブロ派/キャノン派:後に再統一しマンデル派となる)
この時、ポサダスとその支持者はミシェル・パブロとその派閥である第4インターナショナル国際書記局(ISFI/IS)に味方した。しかし59年にポサダスが支持している熱核戦争(核の炎で資本主義社会は破壊され社会主義の時代がやってくると主張)の問題を巡りISFIの多数メンバーと衝突するようになった。
そしてポサディストは62年にISFIと分裂し第4インターナショナルポサディストを設立した。
(キューバにはポサディストグループがあり59年の革命でカストロ、ゲバラと共に戦った)
ポサディストグループは、キューバ政府がグアンタナモ湾のアメリカ軍基地を強制的に追放すべきだと主張し、グアンタナモの町の労働者を組織して近くの軍事基地に行進させようとしたことでキューバのソ連寄り勢力から非難された。66年1月に開催された三大陸会議で、カストロはゲバラの影響力を「疫病神」と糾弾し、これを理由にゲバラを追放することを決定、逆に、ゲバラがボリビア当局によって処刑された後、ポサダスは1967年にチェ・ゲバラが実際には死んでおらず、カストロの政府によって刑務所に保管されていると主張。 1968年までに、ポサダスの運動がヨーロッパで発展し始めたが、ufology(UFO研究)は多くの牽引力を集めることに失敗した。
話を戻して…60年代後半、ポサディストはUFOに関心をさらに寄せるようになり、UFOは他惑星が社会主義体制の証拠であると主張しだした。これが先述した「他の惑星から来た宇宙人は皆高度な共産主義社会に住んでいる」に繋がる。
その後は多くのメンバーが追放され偏執狂的なポサダスによりすぐに影響力が低下しさらにメンバーがいなくなっていた。
81年にポサダスが死去、組織は事実上解散した。今でも活動を続けているグループは非常に少ない。
(イギリスでは革命労働者党(トロツキスト)が63年にポサディストのメンバーによって設立され、分裂や会員数の減少もあったが2000年まで新聞を発行し続けた)
近年(2018年現在)、特にUFO研究における見解に関して、ポサダス派への関心が高まっている。ソーシャルメディア上では風刺的・非風刺的な「ネオ・ポサディスト」グループがいくつか出現し、ポサダスは「トロツキズムの歴史において最も認知された名前の一つ」となった。
加盟政党
第4インターナショナル・ポサディストはいくつかの政党をメンバーとして主張している。
これらの組織のうちいくつがまだ存在し、どれだけのメンバーがいるのかは不明である。しかし、世界中に100以上のポサディズム運動のメンバーがいるとは考えにくい。この組織は現在アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイの連絡先を記載しているが、ウルグアイだけが機能している政党を持っている。
参考文献
Fourth International Posadist – Wikipedia en.wikipedia.org
J. Posadas – Wikipedia en.wikipedia.org
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